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製品開発ストーリ #22 APOGEE
UV22スーパーCDエンコーディングを搭載した ニュー・モデル、UV-1000

APOGEEブランドを有名にした
AD&DAコンバーター

 その後、さらにデジタル・オーディオ・システム全体のクオリティを上げるため、APOGEEはADコンバーターやDAコンバーターの開発に取り組むこととなった。最初のADコンバーターであるAD-500はボブ・クリアマウンテンを始め数多くのレコーディング・エンジニアに絶賛された。カスタマーと長く付き合っていくことをポリシーとしているというAPOGEEは、AD-500発表後も逆電圧のスラッシュ・フィルター・モジュールや新しいクロック、ソフトウェアの開発を行ない、オリジナルのAD-500でもアップグレードにより最新モデル同様のクオリティを実現することができるようになっている。93年には、このAD-500にインプット・モジュールを装備したAD-500Eを発表。さらに、20ビット・レゾリューションのADコンバーター、AD-1000もリリースした (日本でも近日中に発売予定)。このAD-1000はマイクおよびライン・レベルの入力が可能なプロダクトであり、さまざまなシンク・ソースに対応。さらにADAT用インターフェースも装備している。

 またDAコンバーターのDA-1000Eのラインナップにも、20ビット・クオンタイズのデジタル入力に対応したDA-1000E-20が登場している。これらコンバーターのクオリティには、電源ユニットの果たす役割も非常に大きいという。PS-1000は超ロー・ノイズDC/DCパワー・サプライで、通常この方式はノイズが多いとされているのだが、サンプリング周波数と同期しているためノイズの原因とはならない。アナログで良い音を出すためかなりの電力を供給しているが、ポータブルなユニットにまとめられている。

独自の方式を採用した革新的な
エンコ一ディング・システム

 こうしたコンバーターの開発を進める一方で、APOGEEはディザー (Dither) に注目してきた。現在のCDからそれ以上のスペックを引きだそうとさまざまな試みがされてきているが、ここでもAPOGEEは独特のアプローチを採っている。

「通常のディザーはノイズを付加してノイズ・フロアを低減しているし、ノイズ・シェイピングやビット・マッピングの手法では高周波数域をブーストすることでノイズ・フロアを低減している。だが、通常のディザーは非常に効率が悪い。ホワイト・ノイズなので周波数は低いし、高周波の問題もあるからだ。我々は数学者を雇ってさまざまなモデルや分析プログラム、最適化プログラムを作成したのだが、その結果、フィルターを通したノイズを使うわけにはいかないということがはっきりした。そこで、その代わりに非常にユニークな合成シグナルを使うことにしたのだ。これがUV22アルゴリズムの基本となった。

 これは、要するにデジタルをアナログのようにするというものだ。アナログの良いところは、たとえノイズがあっても聴こえるというところにある。海辺で波の音を聴いているとき、波の音が大きくなってもガールフレンドの声は聴こえるだろう?つまり、ノイズがあっても会話に支障はない。ノイズがあっても、リバーブやエコーが聴こえて微妙なディテールやイメージを加えることができるんだ。だが、ノイズ・フロアが湖の表面だとすると、今のデジタルは濁った湖だ。ノイズ・フロア以下は見ることはできない。ところがアナログの湖は澄んでいるから、中の魚までも見えるんだ」

 ノイズ・シェイピングやビット・マッピングといったテクニックと大きく異なるのは、このUV22ではオーディオ帯域内でノイズ・レベルを減らそうとはしていないということだ。

「16ビット・デジタルの場合は理論上は-96dBという非常に低いノイズ・フロアだが、実際に聴いてみると結構お粗末に聴こえる。そこで我々は結果的にこのノイズ・フロアをかなり透明にして、ノイズが聴こえるようなレベルでもディテールが追加されて、デジタルのギザギザした波形を滑らかにするようにした。ノイズ・シェイピングやビット・マッピングを提唱する人たちは96dBでは十分でないと言うが、我々はCDの持つ96dB (16ビットx6dB=96dB) は、ほとんどの場合に十分だと考えているんだ。実際、ほとんどの素材のノイズ・レベルは非常に高い」。

 APOGEEは、5年間にわたる構想の鮭果、UV22スーパーCDエンコーディングを搭載したUV -1000を発表した。これはディザーとは異なり、アナログ・テープ・ノイズに非常によく似た特性のホワイト・ノイズのレベルを一定に保つような、革新的な理論が採用されている。

 「一般的にノイズ・シェイピング・システムは、トーナリティが変わる傾向がある。ボーカルや楽器が固くなって、自分に向かってくるようになる。そして入力された信号に依存するため、その効果は素材によって変わってくるんだ。我々はアメリカでリスニング・テストを行なった結果、APOGEEのシステムはイメージをキープし、トーナリティを維持するので、ほかのシステムと比べてもオリジナルに非常に近いという結論を得た。ボブ・ラドウィックは昨年からプロトタイプを使用しており、非常に気に入ってくれている。彼とダグ・サックスは製造番号が1番のものを欲しがったので、東西用に1Eと1Wという2つのモデルを作ったよ (笑)。

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